ナノバブルでワサビの発芽率が3倍超に! イオンとの相乗効果による新機能の発現に成功(須川PJ)

マイクロバブルやナノバブルなど、いわゆるファインバブルには人の生活を変える大きな可能性があります。その応用は農業や水産業、工学、医療など非常に幅広く、世界中で活発な研究が始まっています。しかし作用メカニズムには不明な部分が多く、適切な利用形態も明らかではありません。今後の実用化に向けてさらなる研究開発が求められています。

東北大学未来科学技術共同研究センターの高橋正好特任教授とオリエンタル白石株式会社(以下、「オリエンタル白石」)は、耐久性に優れたコンクリートの開発や、作物と魚を同時に育てる水耕栽培アクアポニクス(注2)へのファインバブルの応用などを目的とした共同研究を進めています。その取り組みの中で、ナノバブルと呼ばれる小さな泡を使うことで難発芽性種子である本ワサビの大幅な発芽率向上に成功しました。そのメカニズムとして、ナノバブルがカリウムイオンを種子の内部に能動的に運び入れる現象を発見しました。その効率は非常に高く、水溶液中のカリウムイオン濃度が99%以上低下しました。これに対してナノバブルが無い場合、同じ水質条件であってもカリウムイオンの濃度低下はわずか10%程度でした。

細胞レベルでのイオンの交換は生命現象の本質にかかわる重要な現象です。小さな泡がナノレベルでの物質のやり取りに貢献できるという今回の発見は、生命現象を含めた様々な分野での実用展開に向けて新たな一歩になり得るものと言えます。

本研究の成果は、2023年2月27日にオンライン誌Scientific Reportsに掲載されました。

(注1)ナノバブル
長期に安定化した微小な気泡であり、動植物への活性作用などが期待されています。未来科学技術共同研究センターではマイクロバブルを利用して作成しています。マイクロバブルは表面にエネルギーが濃縮する特徴があり、これを利用して汚れた水の浄化や半導体ウエハの洗浄などの技術開発を進めています。マイクロバブルの表面エネルギーとごく微量な鉄イオンを利用することでナノバブルとして安定化させることに成功しました。

(注2)アクアポニクス
自然に近い環境を作り出して食糧(野菜と魚)を生産するシステムです。陸上養殖と水耕栽培から構成されており、それぞれの特徴を有効に生かした循環型の技術です。未来科学技術共同研究センターとオリエンタル白石では、マイクロバブルやナノバブル技術を組み合わせることで、持続性と生産性により優れたシステムの開発を進めています。

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