ナノ粒子分散液の新たな濡れ現象を発見 液滴の超拡張濡れ現象とその可能性(阿尻PJ)

私たちの身の回りにある液体は、固体表面に触れると、その性質によって様々な濡れ方を見せます。この濡れ現象は、塗料やインクの塗布、印刷など、私たちの生活を支える多くの産業において重要な役割を果たしています。近年、この塗布・印刷に用いる材料としてナノ粒子を液体に分散させたナノ粒子分散液(※1)が注目されており、そのユニークな性質を利用した新しい材料開発が進められています。しかし、ナノ粒子分散液の濡れ現象(※2)については、まだ多くの謎が残されています。

東北大学大学院工学研究科の庄司衛太准教授、星野瑛大学院生(研究当時)、琵琶哲志教授、久保正樹教授、同大学未来科学技術共同研究センターの塚田隆夫特任教授、同大学学際科学フロンティア研究所の笘居高明教授、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の阿尻雅文教授らの研究グループは、ナノ粒子分散液が基板上で従来の濡れ挙動と比較して、広範囲に広がる超拡張濡れ(※3)現象を示すことを発見しました。

本成果は2024年12月2日、科学誌Langmuirにて公開され、雑誌表紙に選ばれました。

※1. ナノ粒子分散液
非常に小さなサイズ(ナノメートル:1メートルの10億分の1)の粒子が分散した液体。ナノ粒子由来の機能が発現されるため、塗布や印刷技術での新しい材料として注目されている。

※2. 濡れ現象
液体が固体表面に接したとき、どのように広がるか(あるいは広がらずにとどまるか)を示す現象。塗料の均一な塗布や、インクジェット印刷の品質に関わる重要な現象である。

※3. 超拡張濡れ
液滴が、通常よりもはるかに広い範囲に広がる特異な濡れ現象。この「超拡張濡れ」現象は、ナノ粒子の混ざっていない単純な液体を扱う従来の濡れの理論では説明ができず、基板表面に対する液滴の広がり方の制御に重要な現象である。

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