セルロースナノファイバー(CNF)の超音波特性 音響機器部材材料としての特性を評価 物理的高性能電子吸着体の発見(松木PJ)

 原料は木材でありながら引張強度は鉄の5倍もあると言われているセルロースナノファイバー(CNF)は、 生分解性でもあり、カーボン・ニュートラル素材の地球再生のエース材料として期待されています。

 東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェロー、長谷川史彦前教授(現客員教授)、大学院附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授は、TEMPO酸化CNF(以下ATOCN)が実質的にアモルファス(注1)(非結晶)であり、4種類の弾性率は軟鋼(S10C)、不銹鋼(SUS304)より顕著に小さいことを超音波計測によって明らかにしました。

 7×7cm2の日本製紙製ATOCNシートを40μmに積み重ねたものを、常温においてMHzの周波数を持つ縦波・横波の超音波法(注2)を用いて測定しました。その結果、本ATOCNは音響学的に等方的弾性体であり、自然素材の特徴を示す一方で、弾性特性比からはセラミックスの分類に含まれます。本ATOCNの弾性、粘弾性は3次元の体積変形に支配されることが特徴です。特に小さい音響インピーダンスからは樹木が水や氷を媒介として外界の情報を伝達させている可能性が予測されます。

 また縦波や横波の小さな減衰係数から判断して、本材料は調和音の伝搬物質としてスピーカーやマイクロフォン、イヤフォン等の音響機器部材材料への応用が期待されます。

 本研究成果は、2021年4月16日に、Springer-Nature誌のMRS Communicationsにオンラインで掲載されました。

注1.アモルファス:ガラスのように、元素の配列に規則性がなく全く無秩序な材料である。結晶材料とは異なる種々の特性を示す。

注2.超音波法:物質の音速は温度と圧力により変動する。超音波法の圧力効果は無視できるが、共振(1-20kHz)法のような他の方法は高周波数疲労により劣化の可能性がある。従って超音波法はナノメートル径CNFからなる本ATOCN試料の弾性と粘弾性の評価において最適な非破壊評価方法である。

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本学プレスリリース