酸化処理したセルロースナノファイバーの高い蓄電性の機構を解明 ―官能基への結合水が蓄電性向上に寄与―(橋田PJ)

木材パルプ等から生産されるセルロースナノファイバー(CNF)は、カーボンニュートラル(注1)を推進する新規素材として期待されていますが、現時点での応用は機械的・化学的分野における使用に限定されています。

東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫学術研究員、橋田俊之特任教授、静岡大学の藤間信久教授らの研究グループと日本製紙株式会社富士革新素材研究所は共同で、以前同グループが見出していたTEMPO酸化CNFの蓄電性に関して、その機構を詳細に調べた結果、結合水の存在が蓄電性に大きく寄与することを見出しました。CNF蓄電体は構成材料に電解液を全く用いない特徴がありますが、今回の検討により、本固体蓄電体は使用温度が~150℃と広範囲であり、しかも従来の蓄電池と対照的に耐水性があることが実証されました。これは500Vまでの高電圧短時間充電に加え、空中や真空中からの電荷の蓄電に道を開く可能性があります。またナノサイズ径CNFの使用とそのシートの積層化による蓄電体の大容量化が示唆され、「ペーパーエレクトロニクス(注2)」への展開が期待されます。

本研究成果は、2023 年10月3日に科学誌Scientific Reports にオンライン掲載されました。

(注1)温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的排出をゼロにすること。

(注2)セルロースを基材として紙本来の特性を利用したエレクトロニクス

関連ページ
本学のプレスリリースのページ(こちらから