研究プロジェクトライフサイエンス

酸素代謝制御プロジェクト Applied Oxygen Physiology Project

プロジェクト期間2022年1月1日~2026年12月31日
鈴木 教郎 教授 鈴木 教郎教授 Prof. Norio Suzuki

研究の概要

私たちのからだは酸素を使って生存に必要なエネルギーを得ています。そのため、酸素の不足は生命に関わるストレスとなります。また、様々な疾患が酸素不足を引き起こすこともわかってきました。一方、酸素の利用に問題があると活性酸素種などが発生し、臓器を傷害することがあります。私たちは、酸素の供給と利用(代謝)の調節が多くの疾患や老化と関係することを明らかにしてきました。本プロジェクトでは、これまでの研究成果をもとに、酸素の代謝を制御する技術開発を通して、革新的医療の開発を目指します。

研究の特色

肺で取り込んだ酸素を全身に分配するには赤血球が必要です。私たちは、赤血球を増やすホルモン(EPO)を十分につくることができない遺伝子改変マウスを開発し、貧血による酸素不足(低酸素ストレス)が生体に及ぼす影響を調べています。また、EPOは腎臓でつくられるため、腎臓病は貧血を併発することがあり、EPO製剤やEPO産生誘導剤が貧血治療に使われています。本プロジェクトでは、これらの治療薬の作用機序解明と効果的利用法開発に貧血マウスを活用して取り組みます。さらに、独自の動物モデルや培養細胞系(図)を活用して、腎臓病や貧血に対する治療薬を探索・同定します。独自の解析系に加えて、酸素代謝という新しい視点を導入することにより、病態解明を進展させ、革新的医療の開発に貢献します。

期待される成果・展開先

腎臓病は世界人口の1割以上が罹患するものの、治療薬の存在しない難治疾患です。また、血液透析などの高額医療が必要となるため、各国で医療費高騰の原因となっており、腎臓病は国際的に医学的かつ社会的な問題として認識されています。最近、私たちは、腎臓病によってEPO産生量が低下し、貧血が発症するしくみを明らかにしました。また、貧血による低酸素ストレスが様々な疾患の素地となることを見いだしました。本プロジェクトでは、これまでに独自開発した腎臓病および貧血の解析システムを駆使して、新たな視点から病態を分子レベルで理解し、医療に貢献することを目指しています。また、独創的な病態モデル動物や細胞培養解析システムを開発し、製薬企業等との共同研究・開発に活用します。本プロジェクトによって得られる研究成果を革新的な医療技術と医薬品開発に展開し、各国での社会的・経済的問題の解決につなげます。

腎臓でEPOをつくる細胞「REP細胞」が光るマウスの腎臓。遺伝子改変によってREP細胞が赤と緑に光っています。

腎臓でEPOをつくる細胞「REP細胞」が光るマウスの腎臓。遺伝子改変によってREP細胞が赤と緑に光っています。

マウス「REP細胞」から作出した培養細胞「Repic細胞株」。新しい薬の探索・開発に活用します。

マウス「REP細胞」から作出した培養細胞「Repic細胞株」。新しい薬の探索・開発に活用します。

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