マス疾病モニタリングを実現する環境センチネル技術研究開発拠点の構築 Establishment of R&D hub for environmental sentinel technologies enabling mass disease monitoring

研究の概要
様々な感染性・非感染性疾患が全世界で多大な被害を生じさせており、経済活動等に甚大な影響を与え続けています。本プロジェクトでは、下水などの環境サンプル中に存在する様々な疾病関連バイオマーカーの種類および量の情報を人間社会における公衆衛生・疾病対策に活用するために、環境サンプル中バイオマーカーのリアルタイムモニタリングを実現する環境センチネル技術を確立すると同時に、得られた情報を発信・共有するフレームワークを確立することを目指しています。
研究の特色
下水などの環境サンプル中から、感染症に関わる病原体に由来する遺伝子を回収・濃縮して検出する技術はこれまでに数多く報告されています。それに対し、環境サンプル中の疾病関連バイオマーカーを検出対象としたバイオセンサー技術の開発は、全世界を見渡しても本プロジェクトのみが取り組んでいる研究テーマです。また、環境サンプルから得られた疾病関連情報をリアルタイムで共有するシステムも実現されていません。本プロジェクトでは、独創性の高いテーマに世界に先駆けて取り組むことで、下水を含む環境サンプルから得られる疾病関連情報の社会における活用について世界をリードし、知識と技術が集積する研究ハブの形成を目指します。
期待される成果・展開先
本プロジェクトにおける研究の進展により、信頼性の高いバイオセンサー技術を社会の歩哨(環境センチネル)として広範囲に配置し、得られたモニタリング結果から対象コミュニティにおける感染性・非感染性疾患の患者数の推定を行い、その情報を社会に向けて発信することでコミュニティ全体が疾病予防に動くように働きかける新たな社会システムが確立されます。このような新たな社会システムは、COVID-19のような、人類が経験していなかった感染症の早期検知にも対応可能と考えられることから、先進国・途上国問わず、住民のウェルビーイングを重視するコミュニティに導入される可能性があります。当初から国際展開を視野に入れて取り組み、最終的には日本を含む複数の国々でのシステム導入を目指す予定です。

環境センチネル技術を用いたマス疾病モニタリングの概念図