研究プロジェクトナノテクノロジー・材料

超大規模計算科学シミュレーションの産業展開 Super-Large-Scale Computational Science Simulations for Industrial Development

プロジェクト期間2020年8月1日~2027年7月31日
久保 百司 教授 久保 百司教授 Prof. Momoji Kubo

研究の概要

世界的に早急な対策が求められているエネルギー問題の解決、安全・安心社会の実現には、理論に基づく高度な材料設計技術の進展が強く切望されています。しかし、周期表の中の元素の数は限られていることから、本プロジェクトでは「元素に頼らない材料設計」を戦略目標とし、世界に先駆けて超大規模計算科学シミュレーション技術の開発と、それに基づき金属・セラミックス・高分子・炭素材料など多成分から構成される複雑なコンポジット材料の理論設計を実現することを目的としています。

研究の特色

本プロジェクトでは、数百万~数億原子系の超大規模計算科学に基づき、①ナノスケールの「化学反応」が、マクロスケールの「機能・特性」、「材料劣化・摩耗・腐食・破壊現象」、「合成・加工プロセス」などに与える影響を解明可能とするマルチスケール計算科学シミュレーション技術と、②「化学反応」に加えて、「摩擦、衝撃、応力、流体、電子、熱、光、電場」などが複雑に絡み合った現象を解明可能とするマルチフィジックス計算科学シミュレーション技術を開発します。さらに、これら技術を燃料電池、トライボロジー、構造材料などの具体的な産業課題に応用することで、超大規模計算科学シミュレーションの産業展開を目指します。

期待される成果・展開先

本プロジェクトでは、超大規模計算科学シミュレーションによって、単純に「計算サイズ」を大きくするのでは無く、計算科学の本質的な「質」の変革を目指します。例えば、燃料電池分野ではこれまでの計算科学が対象としてきた触媒への添加元素の設計では無く、触媒層の3次元構造の設計を可能とし「元素に頼らない材料設計」を実現します。また、トライボロジー分野では小規模計算による「摩擦現象」の解明から、超大規模計算によって初めて可能となる「摩耗現象」の解明へとパラダイムシフトを実現します。さらに、構造材料分野では、これまでの計算科学が対象としてきた「亀裂進展」のシミュレーションから、ナノスケールの化学反応がマクロスケールの「腐食現象」に与える影響の解明へとゲームチェンジを実現します。これらの超大規模計算科学によってもたらされる革新により、産業技術への計算科学の応用展開に新たなイノベーションをもたらすことを目的としています。

宇宙機器のマルチスケールシミュレーション

宇宙機器のマルチスケールシミュレーション

エンジン用潤滑剤のマルチスケールシミュレーション

エンジン用潤滑剤のマルチスケールシミュレーション

太陽電池のマルチスケールシミュレーション

太陽電池のマルチスケールシミュレーション