サルコペニアプロジェクト Understanding and Treating Sarcopenia
プロジェクト期間2025年4月1日~2026年3月31日

研究の概要
高齢者や疾患者は、筋力や筋量の低下によって歩行速度が低下(1m/秒以下)し、転倒のリスクも高くなります。このような症状をサルコペニアと呼び、高齢化先進国の日本では社会問題となっています。本プロジェクトでは、サルコペニアが起こる仕組みを理解し最適な予防法や治療法を開発します。サルコペニアはがん患者や心筋症患者に多く見られることから、両者の関係を明らかにし、サルコペニアを緩和する方法も開発します。
研究の特色
サルコペニアの理解と治療の研究は次の3つの段階で進めます。
- 基礎研究:筋力の低下や細胞ダメージを非侵襲的に定量できる技術の開発を行います。この技術を用いて、さまざまな細胞ストレスを与え、筋力の低下や細胞ダメージの定量を行います。
- 医学応用研究:活性酸素が筋劣化を招くこと知られているので、マウスに活性酸素が減少する薬物を投与し、損傷予防に効果があるか検証します。さらに①で明らかとなった筋ダメージの原因に対する対処法を開発します。
- 社会実装:サルコペニアを防ぐ簡略な方法は、全身運動を行うことです。筋力低下を予防するために室内外で楽しくかつ効率的に運動できるシステムを構築します。
期待される成果・展開先
サルコペニアの多くは全身運動によって、ある程度は防ぐことができます。しかし、老化によって筋力が減少する原因は、未知な部分が多いので基礎研究を通じ原因を明らかにします。さらに対処方法を開発を通じ、医学基礎や生物工学に寄与するだけでなく我々のQOL(生活の質)を高めます。
サルコペニアは、がんや心筋症患者に高頻度で起こることが知られています。本プロジェクトによって、これらの病気とサルコペニアをつなぐ直接の関係性を分子レベルで理解します。そして疾患治療中や治療後のケアを改善することで、QOLの向上を目指します。
サルコペニアと並んでフレイル(身体的脆弱化)やロコモ(運動器の機能低下)は筋力低下の別の側であり、日本だけでも4千万人以上がこれら運動機能低下を示しています。このような大きな集団に対する効果的な改善法を開発することで、国民のQOLが上がるだけでなく、経済へも多大な影響を及ぼすと考えられます。
