研究プロジェクト黎明型プロジェクト

フォトスピンエレクトロニクス新材料開発 Development of Novel Materials for Photo-Spin Electronics

プロジェクト期間2024年4月1日~2025年3月31日
畠山 力三 学術研究員 畠山 力三学術研究員 Research Fellow
Rikizo Hatakeyama

研究の概要

エネルギー制御プラズマイオン照射法により、スピン状態に依存した蛍光発光する“窒素‐空孔(NV)中心”をナノダイヤモンド内に創ります。次に、機動性プラズマ化学気相堆積法を駆使して、その表面に超高速度の電子移動度を持つ原子スケール厚さのグラフェンを層数及び界面構造制御の下で接合します。続いて、創製されたNV中心内蔵ナノダイヤ・グラフェンの電気・磁気・光学的新規複合機能発揮を検証し、電荷・スピン・光子の三者共働・相乗作用を活用する未踏領域の“フォトスピンエレクトロニクス”の科学技術基盤を構築します。

研究の特色

本来は炭素があるべき箇所が窒素(N)で置換され、隣接する位置に空孔(V)がある複合欠陥の“ダイヤモンドNV中心”は、スピンすなわち磁性的性質を示し室温大気圧下でも量子状態を保持でき蛍光発光するので、スピン・光子の相乗効果が期待できます。本研究では、これを従来のMeV級の高エネルギーイオン照射法に代わって、N2+エネルギーを100eV内外で制御できるプラズマイオン照射法を用いて、低損傷かつ高効率のNV中心創出を目指します。次に、原子層プラズマプロセシング法を駆使して、その表面にSiを凌ぐ電荷移動度と最も高い光透過度等を持つグラフェンを接合します。この電荷・スピン・光子の複合活用が期待できる、NV中心内蔵ナノダイヤ・グラフェン創製は世界で初めての試みです。

期待される成果・展開先

ナノダイヤモンドとグラフェンの物理吸着ナノ界面では、格子整合性が良いことに起因して、前者がグラフェン「超高速電子デバイス」と「過酷環境下バイオセンサー」の、後者がダイヤモンド「超広バンドギャップ半導体デバイス」と太陽光目隠しの「紫外線検出器」及び放射線に強い「アドバンスト放射線検出器」の有用な電荷収集基板・電極と成り得ます。また、吸着した元々は半金属のグラフェンは有限のバンドギャップを持つ半導体と成り得ると共に、ナノ界面両側電子間近接交換相互作用に因り、グラフェンに電子スピンが新たに発生し得ます。一方、化学吸着(共有結合)ナノ界面の場合には、僅かな格子不整合に適応しグラフェン界面が波状構造に変形し、異方性高電流駆動の発生が期待できます。

NV中心内蔵ナノダイヤ・グラフェンでは、以上の新しい物性・デバイス特性に蛍光発光が加わるので、生体蛍光イメージングや磁気センシング分野は勿論のこと、“発光する”超高電流駆動スピンエレクトロニクスデバイスや量子コンピューター・量子中継等広く量子情報科学技術に応用展開できます。

最終目標 次元融合プラズマナノ材料・デバイス科学技術の基盤確立(左)とNICHeプロジェクトの目標(右)

最終目標 次元融合プラズマナノ材料・デバイス科学技術の基盤確立(左)とNICHeプロジェクトの目標(右)