研究プロジェクト環境

機械・電気的特性を両立させた環境適合型デバイスの開発 Development of Environmentally Sustainable Devices with Combined Mechanical and Electrical Properties

プロジェクト期間2024年4月1日~2029年3月31日
橋田 俊之 特任教授 橋田 俊之特任教授 Specially Appointed Prof. Toshiyuki Hashida

研究の概要

表面ナノ凹凸を活用する「量子固体蓄電体」やセルロースナノファイバー(CNF)を用いた「バイオ半導体」のデバイス開発を行なっており、エネルギーやエレクトロニクス分野への適用を目指しています。これらのデバイスは、当研究室の福原ら(1,2)により発見された原理・現象に基づくもので、実用化のための機械的信頼性確保と電気的性能向上とを両立させるための検討を行なっています。

研究の特色

「量子固体蓄電体」と「バイオ半導体」は、アルミやCNFで作製されています。アルミは遍在することなく広範囲に存在し、かつリサイクルにおいて実績がある資源です。また、CNFは生物由来の天然素材であり、カーボンニュートラルにも役立つことが期待されます。このように、当該技術は原料の観点から従来技術に比較して、環境負荷の低減に貢献できるものと期待されます。また、資源の適切な利用の観点から、十分な耐久性を有し長期使用を可能にする機械的信頼性を有するデバイス開発は環境持続型技術の提供に貢献できるものと考えられます。さらに、本研究は新しい原理・現象に基づく技術を実用化しようとするものであり、環境に配慮しつつ新しい産業創成を目指す点も本研究の特色です。

期待される成果・展開先

「量子固体蓄電体」は電子を電荷移動の媒体とするものであり、従来のイオンを媒体とする2次電池などの問題点を克服した、高速・高電圧充電が可能なスーパーキャパシターとして開発できることが期待され、自然エネルギーや再生可能エネルギーの蓄電に加えて災害対応の非常用電源、ならびに移動体の軽量化への適用などの展開が考えられます。「バイオ半導体」の研究成果として、CNFで構成するダイオードやトランジスターなどを創成できることが考えられ、低コストで高エネルギー効率の半導体デバイスへの展開が期待されます。また、CNFは良好な生体親和性を有していることから、健康モニタリングなど医療分野への展開も考えられます。CNFは生分解性があるため、廃棄やリサイクルなどの点においても利点があると考えられます。また、本研究で開発する電気的性能と機械的信頼性を両立するための方法は、当該デバイスに限られることなく、広範な展開が求められている固体酸化物燃料電池や固体酸化物電解セルなどのデバイス開発へも応用されることが期待されます。

(1) M. Fukuhara et al., Amorphous aluminum-oxide supercapacitors, EuroPhysics Letters, 123, 58004 (2018).
(2) M. Fukuhara et al., A novel n-type semiconducting biomaterial, Sci. Rep. 12, 21899 (2022).