安全・安心マイクロシステムの研究開発 Research and Development of Micro Systems for Safety and Security
プロジェクト期間2022年4月1日~2026年3月31日

研究の概要
マイクロシステム(MEMS)技術により環境の振動を電気に変換する振動発電機、トンネル、橋梁などの振動から異常の有無を判別できる振動センサ、および自動運転や運転支援に用いられるレーザ走査による距離センサ(ライダー)や拡張現実(AR)ディスプレイ用の走査ミラーを開発します。振動発電機でセンサに電力を供給し、無線ネットワークに信号を送り、電池や外部電力がなくとも、システムを見守ります。またミラーの回転ばねには原子層堆積(ALD)膜をコーティングし、破壊寿命を延ばし、安全を向上します。
研究の特色
- 振動を電力に高い効率で変換する鉛フリー圧電薄膜(MgHfAlN)を用い、世界トップクラスマイクロ振動発電機を達成しています。
- 振動発電機により電力をセンサに供給し、無線により信号をネットワークに送る無線センサネットワークを構築しています。
- 圧電薄膜は高感度振動センサとしても動作します。測定する振動帯域に合わせた設計により、幅広い用途に適用できます。
- ライダー用の走査ミラーとして全方位走査ミラーを設計し、全方位走査の運動安定性を明らかにしました。
- ARディスプレイ用の走査ミラーは、動的変形を抑える高アスペクトALDアルミナフィン構造で構成され、軽量大口径で高速応答できます。
- ALD膜のコーティングによりMEMS破壊寿命が1桁以上伸びます。
期待される成果・展開先
振動発電機、振動センサ、無線チップを組み合わせたセンサネットワークモジュールは、電池不要で、異常の有無を無線でネットワークに送信し、安全・安心な社会を支えるインフラシステムの構築に貢献します。橋梁、トンネル、道路、建物などの構造物の経年劣化をリアルタイムで把握し、寿命の推定と安全の確保を支援し、安全・安心な街づくりに貢献します。また、レーザ走査マイクロミラーは、レーザセンシング技術とレーザディスプレイ技術のキーデバイスで、近年急発展する人工知能(AI)技術と組み合わせることで、自動運転やARの進展に貢献できます。先進のレーザ走査システムでは、小型軽量・高速で、高い解像度が常に追求されています。産業応用の要求を満たす長寿命走査ミラーの設計・試作を通して、企業開発に貢献します。

作製したマイクロ振動発電機

Si-アルミナフィン軽量走査
マイクロミラー

ライダー用MEMS走査
マイクロミラー