超臨界ナノ材料技術の社会実装 Supercritical Technology for Nanomaterials

研究の概要
超臨界反応場では、「水」と「油」が均一に混ざり合います。これを利用して、金属塩水溶液と有機分子を超臨界条件で反応させると、有機修飾された金属酸化物ナノ粒子が合成できます。このナノ粒子は、溶剤やポリマーに分散可能なので、有機と無機の相反する機能をあわせ持つハイブリッド材料を作製できます。本プロジェクトでは、このハイブリッドナノ材料のプロセス構築により機能性ナノインク、高熱伝導性フィルムなど、様々なナノ材料の応用を進めています。
研究の特色
超臨界水熱法は、極めて小さい金属酸化物ナノ粒子を高速合成する手法です。安価な原料を用いて、高濃度・高効率な合成が可能で、幅広い金属酸化物に適用可能です。さらに、超臨界場では金属塩水溶液と有機分子が任意の割合で混合するので、金属酸化物ナノ粒子の有機修飾も可能です。また、流通式装置を用いてナノ粒子を連続大量合成することが可能です。本プロジェクトでは、化学工学的アプローチにより、プロセスのスケールアップを進め、これまでに年間10トンのナノ粒子合成プロセスを完成させています。本手法により、例えば、熱力学的に不安定で、高い触媒活性を示す結晶面のみを露出させた、新規ナノ触媒も合成することができ、その応用も検討しています。
期待される成果・展開先
超臨界ナノ材料技術を利用して合成された有機修飾ナノ粒子は、有機―無機ハイブリッド材料として、自動車、環境エネルギー、パワーエレクトロニクス、医療、建材等様々な産業分野で求められており、実用化が期待されます。また、超臨界プロセスにより創製された露出面制御・高活性触媒ナノ粒子は、新規化学プロセスに応用することで、省エネルギー、枯渇資源問題解決、環境負荷低減、廃熱利用、CO2排出削減等に貢献できます。このように超臨界ナノ材料プロセス技術は、次世代の日本を支える新規産業技術基盤となりうると考えます。我々は、ナノ材料の設計法と、その合成装置・プロセスの設計法の確立を行います。さらにハイブリッド材料におけるナノ粒子の構造形成を研究することで、ハイブリッドナノ材料のプロセス設計を可能にします。このように超臨界ナノ材料技術の社会実装を促進し、最終的には産業・経済・社会への大きく貢献することを目指します。

有機修飾ナノ粒子

応用分野:超高熱伝導ハイブリッド高分子

開発した超臨界水熱合成装置(10t /年)