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セルロースナノ粒子で高性能電界効果型トランジスタを開発  ─再生可能な携帯用ペーパーエレクトロニクスへの利用に期待─(橋田PJ)

プレスリリース 2025年08月07日

セルロースは地球上で一番生産量が多い(約1,000億トン/年)バイオマスであり、カーボンニュートラルとして地球温暖化・沸騰化の救世主となる素材として現在最も注目されている材料の一つです。

 

東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫シニアリサーチフェローと橋田俊之特任教授、同大学大学院工学研究科小野崇人教授、静岡大学工学部藤間信久教授らの研究グループは共同で、Amorphous Kenaf Cellulose Nano-Particleを利用したショットキー接合(※1)によりn型バイオ半導体 MESFET(※2)を作製し、負のゲート電圧で3.5桁の増幅作用と、正のゲート電圧において不揮発性メモリ効果(※3)に対する6173という高いオン/オフ比(※4)が発現することを見出しました。また、伝導電子がセルロース分子中のグリコシド結合の酸素O原子の誘起ラジカル(※5)であることを、電子スピン共鳴法(※6)の測定から明らかにしました。

 

研究グループは、セルロ―スの次に大量に存在する動物性バイオマスであるキトサン(※7)のナノファイバーでも半導体特性を既に発見しており、低廉で自然界に広く存在するバイオ素材による半導体作製、さらにはペーパーエレクトロニクス(※8)への展開が期待されます。

 

本研究成果は、2025年7月29日に米国物理学協会(AIP)のオープンアクセスジャーナルAIP-Advancesに掲載されました。また本論文は、注目度の高い論文としてEditor's pickに選定されました。

 

(※1)ショットキー接合:金属の仕事関数Φmに比べ小さい仕事関数Φnを持つn型半導体(またはp型半導体)と金属を接触させたときの接合状態を指す。

(※2)MESFET:電界効果トランジスタの一種。ショットキー接合性の金属をゲートとして半導体上に形成した構造を持つ。

(※3)不揮発性メモリ効果: 電源を切ってもデータが保持されるメモリの特性を指す。従来の揮発性メモリ(DRAMなど)は電源を切るとデータが消えてしまうが、不揮発性メモリは電源供給がなくてもデータを保存できる。

(※4)オン/オフ比: トランジスタなどの電子部品において、オン状態(電流が流れる状態)とオフ状態(電流が流れない状態)の電流値の比率のこと。この比率が大きいほど、スイッチング素子として優れているとされる。特に、ディスプレイデバイスにおいては、106乗以上のオン/オフ比が求められることが多い。

(※5)グリコシド結合の酸素(O)原子誘起ラジカル:セルロースβ-1,4 結合グルコサミン基O中の対電子をもつ酸素O原子から励起された不対電子。

(※6)電子スピン共鳴法: ラジカル(不対電子)を持つ試料に磁場中でマイクロ波放射し,マイクロ波とラジカルの間で起こるマイクロ波を吸収して励起する原理を利用してラジカルの種類や量を測定する手法。ピークの中心位置で決定されるg値はラジカル固有の値をとり、g=2.0045の値より電子起源はグリコシド結合の酸素O原子の誘起ラジカルと判定されました。

(※7)キトサン:カニやエビなどの甲殻類や昆虫の外殻に含まれるキチンから抽出される動物性食物繊維の一種。

(※8)ペーパーエレクトロニクス:セルロースやキトサンを基材として紙本来の特性を利用したエレクトロニクス。

 

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