センター長挨拶

研究成果の実用化を促進する産学連携モデルを提案します

未来科学技術共同研究センター(NICHe:ニッチェ)は、東北大学の知的資源と産業界等外部との連携により、先端的かつ独創的な開発研究を行うことで、広く国内産業・地域産業の活性化に資することを目的に、1998年(平成10年)4月に設置されました。すなわち、世界最先端を行く大学シーズを活かし、社会の要請に応える新しい技術・製品の実用化並びに新しい産業の創出を社会へ提案することを重要なミッションとしてきました。この目的達成のために、本センターでは全学から選ばれたトップ水準の各研究プロジェクトを複数立ち上げ、開発企画部専任の教職員が関係研究者と連携して強力にプロジェクトを推進する形で、活発な産学連携活動を続けてきました。
産学連携は今や、どの大学・部局でも普通に行われていることですが、研究開発専念教員による産学連携プロジェクトの集合体とも言える部局は、今の時代においても数少ない存在だと思います。また、本センターの運営においては、入退室管理や情報ネットワーク管理などセキュリティを重視した大型の専用研究スペースの確保に加え、外部資金による正教員の採用を行なうなど柔軟な人事制度に特徴があります。毎年20億円を超える外部資金獲得・起業化など、実用化志向の研究開発プラニング機能、利益相反・安全保障などの研究インテグリティ管理や適切な資金管理などの研究開発支援体制を充実させています。
一方、本センターは発足以来25年を経過し、この間に大学を取り巻く社会の状況は大きく変化してきました。ここ10年ほどは日本の大学の研究力低下が囁かれてきましたし、産業界の投資、開発意欲の低下も大きな心配事になっています。このような厳しい状況に対し、本センターの産学連携体制もしっかりと対応しなければならないことを自覚しておりました。そのような中、2022年は本センターの7つのプロジェクトが終了するタイミングであったため、定年後のシニア教員を含む幅広い年代の研究者が更に研究スキルを如何なく発揮して頂けるよう、プロジェクトの再定義を行いました。従来型のプロジェクト(本格型)はもとより、その準備段階(予備型)、あるいは社会人再教育やリスキリングを目的とした人財育成(教育型)、更には本学の研究ステータス向上に資するサイエンスメリットに特化した事業(学術型)、その後の「大化け」を期待した挑戦(黎明型)もプロジェクトとして認め、テーマ発掘を進めました。その結果、2023年度は新たに9つのプロジェクト(本格型4、予備型2、黎明型2、学術・教育型1)が立ち上がり、5つの終了プロジェクトが新定義に従って期間更新(いずれも本格型)が認められました。
いま日本政府は10兆円規模の基金を準備・活用し、世界トップレベルの研究力などが期待される大学を支援する「国際卓越研究大学」を公募しています。東北大学は、東京大学、京都大学、他7校と共に、野心的なKPIを掲げて申請しました。現在審査が進められていますが、最初の国際卓越研究大学に指定されるべく、広範囲な面で体制整備・強化を進めています。このスキームにより、広範な研究分野での益々熾烈になっていく世界に対する競争力が醸成されていくでしょう。また、東北大学の研究シーズによる具体的な成果実装も、これまで以上に強く地域社会から求められていくことは間違いありません。
国際卓越研究大学では、大学を事業体とみなし、大きな事業成長率が義務付けられています。産学連携に特化した本センターに期待される事業成長率達成目標は他部局よりも遥かに高いものとなっておりますが、センターの使命に立ち返り、「プロジェクト再定義」を絶好の機会として、実効性、および社会インパクトがより大きな先端研究・OJTを邁進したいと思います。
2015年12月に仙台市営地下鉄東西線・青葉山駅が開業し、本センターは本学青葉山キャンパスの玄関口に位置する絶好のロケーションとなりました。2023年のファーストビームが予定されている次世代放射光施設も近いことから、本センターを利用して頂く機会は多くなると思います。皆様の本センターへのお越しをお待ち申し上げますと共に、今後とも皆様の一層のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

令和5年 7月
東北大学未来科学技術共同研究センター
センター長・副学長 長坂 徹也