大村教授が土木学会功績賞、大村プロジェクトグループが土木学会論文賞を受賞しました。(大村プロジェクト)

 当センター 大村プロジェクトでは,平成29年度土木学会賞におきまして,土木学会功績賞(大村教授),土木学会論文賞(大村プロジェクト)を受賞いたしました.詳細につきましては下記のとおりとなります.
 なお,授賞式は6月8日 土木学会総会で執り行われました.

  1. 土木学会功績賞
      大村(おおむら) 達夫(たつお) 教授
    【表彰理由】
     大村達夫氏は,衛生工学分野において,先駆的にウイルス等の水中病原微生物の健康リスクに関する研究を主導し,基礎研究から実証的研究まで幅広い領域で優れた研究成果を挙げてきました.その成果により,平成26年度土木学会研究業績賞を受賞しています.
     また,大村氏の研究指導学生6名が土木学会論文奨励賞を受賞したことからわかるように,次世代の土木学会を担う若手研究者・技術者の育成にも大きな貢献をなされております.
     土木学会活動においては,理事,東北支部長,環境工学委員会委員長などの要職を務められ,学会の発展に多大なるご貢献をされております.さらに,東日本大震災の後には国土交通省や(社)日本下水道協会等の委員会の委員長として,被災地の下水道の復旧復興に指導的役割を果たされるなどの多大な社会貢献をされております.
     以上の理由により,功績賞の受賞者にふさわしいと認められました.
  2. 土木学会論文賞
     感染性胃腸炎流行の早期検知を目的とした下水中ノロウイルスモニタリングの有用性
     [土木学会論文集G(環境)、 Vol.72,No.7,pp.III_285-III_294,2016.]
      三浦 尚之,風間 しのぶ,今田 義光,真砂 佳史,当广 謙太郎,真中 太佳史,劉 暁芳,斉藤 繭子,押谷 仁,大村 達夫
    【授賞理由】
     感染性胃腸炎は,監視定点に指定された小児科医療機関あたりの患者報告数が1週間あたり20人を超えた場合に,各都道府県の保健・福祉系部局から流行拡大予防のために注意が喚起される.しかしながら,患者報告数が集計・公表されるには1〜2週間の時間を要することから,注意喚起の報道発表までに流行がさらに拡大することが懸念されている.著者らは,2年半に渡って毎週収集した流入下水試料中のノロウイルス濃度と対象地域で発生した感染性胃腸炎患者報告数の類似性を相互相関分析により評価し,下水中ノロウイルス濃度は患者報告数に対して遅れがなく変動することを明らかにした。さらに次世代シーケンサーを用いてノロウイルスの遺伝子型を詳細に調べた結果,下水中には地域で発生した患者から分離された遺伝子型と同一の遺伝子型が含まれ,それらが経時的に変化することを示した.すなわち,本論文にまとめられた研究は,下水中に含まれる病原微生物の濃度や遺伝子型を分析することで,社会における感染症の発生状況を把握できることを実証している.
     以上のように本論文では,「病原体が含まれる汚水を集めて処理する」という下水道本来の機能を活用し,「下水から検出された病原微生物の情報を感染症の流行拡大防止に役立てる」という下水道が社会に貢献できる新たな機能の創出に繋がる有用で実用的な知見を見出しており,論文賞に相応しいと認められた.